ああそうなんだイタリア語

ああそうなんだイタリア語 8

8.Subito 昔学生時代にイタリア語の通訳でバイトをしたことがあります。最初は全くのダメ学生だった頃、何かのコンベンション会場で、特にやることはなくただ何か聞かれたら答えれば良い、という程度のお仕事。「何も聞かれなければいいな」と、冷や冷やしながらやっていた思い出があります。覚えていることは、イタリア人のお年寄りがタクシーに乗りたいという事で案内してタクシーに乗せた後、急に騒ぎ始めた。何だと聞いたら、「料金はいくらだ」と、多分心配になったのだろう。いやそれは、このメーターを見ればよいと言いたかったのだが、メーターが分からない。何とか手で指して理解してもらったものの、こういう名詞が分からないのですね。のちにイタリアへ行って、macchinetta(小さい機械、機器)と言えばいいと知りましたが。イタリアに1年程行って帰ってきてから今度は通訳の仕事をやりました。ある商社のお手伝いで、技術関係の通訳でした。イタリアは食べ物とか、ワインやチーズなどの農産物かファッション製品ばかしで、工業製品はないと思っている人もいるが、実は工作機械やヘリコプターとか拳銃などちょっと変わったところで、世界レベルの技術を持っているそうです。勿論車も知られていますが。そういう訳で、私の仕事は工作機械の技術者の通訳ということです。実は、日常会話はそれほど困らないとは思っていたものの、機械などの専門用語はからきし駄目ですので、通用するかどうか自信はありませんでしたが、商社の方が分かる範囲で通訳してくれたらよいと。本式の通訳は高いからそこまで貴方に期待していないから大丈夫、とか言われて安心して引き受けた次第。この仕事は朝から夜の付き合いまでべったりでしたが、とても楽しく面白いお仕事でした。商社マンの優秀さと爽やかさも印象に残りました。イタリア人の技術者は優秀な人で、作業中に工場の人に工具などを持ってくるように言うのですが、「今」というのを、最初はOraと言っていたのが(Oraは現状、現在、現代などの「今」)、そうだとなかなか工具が出てこないのが分かって、次にはAdesso(これも現在の意味からたった今の意味まで)というようになって、そのうち本当に今すぐ欲しい時には、Subito! と叫んでいたのを思い出します。その叫び方が伝わって、本当に「いますぐだ!」と言っているんだなと、工場の人も通訳せずにも納得してくれたようでした。会話は、勢いも大切ですね。ひと頃流行った「今でしょ」も、このうちどれでも通じますね。

ああそうなんだイタリア語 7

7.goloso:ゴローゾ 時間の流れは、人それぞれです。昔中国に仕事で何度も行き来している頃、恐らく日本の30年前がこんなんだったんじゃないかという建物や人々の服装や生活を見て、時間はここでは悠久な気がしたものです。イタリアを最初に訪問したのは1971年でした。それから28年後に再訪ししばらく住むことになりました。そして28年前に流されていたテレビ番組がまだあり、当時有名だったタレントがまだ出演しているのを見て、ここでも時間がゆっくり流れているのを感じました。振り返ってみれば、それだけ日本が急いでいたのでしょう。町の風景が10年経てば様変わりするのが普通だと思っていたのが、中国でもイタリアでも風景はほとんど変わることはなかったのです。しかし、今中国は昔の面影を残さないほど急激に変化しています。逆に日本では、長寿番組は50年も続いているとか、なんだか日本での時間の流れがゆっくりになっているのではないかとも思えます。ゆっくりになっているというのは、世界レベルから見ると、時代に取り残されて行っているという事かも知れません。昨年久しぶりにイタリアを訪問して、目的はベネツィアマラソンへの参加だったのですが、一番思ったのが、こちらはキャッシュレス社会だという事です。到着した日が運悪く交通機関のストライキ。空港から市内へ入るのに、ごく一部の電車が動いているのですが、切符が自動販売機のみでこれがクレジットカード払いのみ。私はクレジットカードはもっているものの、これまでサインで済ませてきたので暗唱番号なるものを知らない。結局そこで切符を手に入れるのに四苦八苦してしまいました。帰りの飛行機でたまたま隣に座った日本人のビジネスマンと話をしたら、彼は北欧を回ってイタリアへ行って今から帰国するところだが、今回の旅行で一度も両替をしていないという。つまり現金を持っていないと。いやあ、驚きましたね。井の中の蛙とは俺のことを言うのか、と思いました。やはり日本にばかしいてはダメです。先日ソフトバンクの孫社長が言っていましたが、日本には彼の巨大ファンドが投資をする先がないと。AIのような先端技術にとても遅れていることを嘆いていました。いやあ、これは本当にひょっとしたら、日本は長期停滞に入っているのかも知れません。時間がゆっくり流れるのは良いのかどうか、まあ私は嫌いではありませんがね。スローはイタリアが得意です。町の中でイタリア人が走るのを見たことはありません。一度だけトリノで泥棒を追っかけているのを見ただけ。エスカレータを歩いて上るなど考えられません。少なくとも20年前まではそうでした。そういえばスローフードはイタリアで発祥しました。ファーストフードに対抗して、食事をゆっくり楽しむ生活を推奨したものでしょう。ARCI GOLA(アルチゴーラ)という美食の会から始まったものです。ARCIは最先端、究極のという意味でGOLAは「喉」のことです。最高の味を楽しむ、といった意味を込めているものと思われます。golosoという単語がありますが、これもgolaから派生したもので、健啖家つまりグルメの事です。

ああそうなんだイタリア語6

  1. Connection コネクション

これは、イタリアに限らずどこの世界でも大事なものである。日本語では「コネ」と言って、これは恐らく英語から取ったものであろう。実はイタリア語のconnessioneにはそういう意味はない。イタリアでも「コネ」の意味で使う場合は、英語のconnectionを使う。では、イタリア語にはコネはないのか、そんなはずはない。イタリア語では、clientelismoという。直訳すれば、「顧客主義」だ。顧客主義は、日本では、お客様優先のビジネスのスタイルを指すものだが、イタリア語のclientelismoは、選挙の一票と引き換えに投票者に便宜を図ることを言う。従いコネというよりも、選挙違反に近い。一方親類や知りあいに就職等の便宜を図ることは、favoritismoと言う。favore(好意)が変化した言葉である。先生が特定の生徒を「えこひいき」することなどもこれだ。特に就職などで親類縁者を優遇する事は、nipotismoという。この言葉は、nipote(甥、姪、孫)から来ている。イタリアの南北問題は、北には仕事があり南には仕事がないことからの格差問題の事でもあるが、南の人は親類縁者が力を持った人でなければ仕事にありつくことが難しい。かといって北へ出稼ぎへ行っても、仕事はあっても出世はまず望めないというのが実情だ。ある南イタリア出身のイタリア人は北の企業で部長の職に就いていたが、自分の場合は特別でこんな幸運は滅多にないと言っていた。彼自身も上司に対しては、平身低頭で何でも“Si, signore!”と答えるサラリーマンだったが、その状況を傍から見ていると、南の人が北で職を得るのが大変な事が実感でわかったものだ。

connectionとconnessioneは意味が違うと書いたが、これと同じような例が他にもある。例えばtestimonialeは証人とか証言の意味だが、testimonialと最後のeを省くと、代弁者、スポークスマンの意味となる。イタリア語はcuoreをcuor(またはcore, cor)、venireをvenirと最後のeをつけてもつけなくても意味が変わらないものだけでなく、このように意味が変わるものもあるので注意。

 

ああそうなんだイタリア語5

フランス語からもひとつ:

5.déjà-vu: イタリア語のついでにフランス語を学んでいると色々役に立つこともあります。「デジャヴ」と良く言いますが、なんのことやら?と思っていました。発音から、フランス語らしい感じはしますが、日本語だと「既視感」と訳されています。良く使われますが、「既視感」と言われてもピンとこない。そんな言葉はあまり聞いたことも使ったこともないからです。一体皆さんどういう意味で使っているのかな、とずっと思っていましたが、フランス語にありましたね。déjà-vu とは、イタリア語で言えば già-visto 英語ならalready-seen。「既に見た」という意味。しかし、デジャヴは、既視感=今まで経験したことのない新しい事件に出会った時に、以前に見たことがあるように感じる事、という意味だそうです。フランス語は哲学的に出来ていて、「既に見た」が「既に見たような感覚」に変わるので、なかなか奥が深いですね(解りにくいと言う意味ですが)。2006年にこの題名の映画が作られて、それからこの言葉が一般的になったようですね。映画を見ていない人にはなかなか難しい外国語。でも、フランス語を勉強し始めた人にとっては、この言葉のお蔭で、voire(見る)の過去分詞がvuだということを覚えることが出来ます。

ああそうなんだイタリア語4

4.Monte モンテ

Monteとは一般には山のことです。Monte Bianco (白い山)はモンブランのこと、Monte Rosa(モンテローザ)はピンク山という意味になります。Monte Rosaは、夕日に照らされた山を見ればその命名が解ります。ピンクか又は赤い山に見えます。Monte Biancoの方は、雪に覆われていることから来た名前でしょうね。一方イタリアの銀行に、Monte dei Paschi di Sienaという銀行があります。1472年の創業ということで、現存する世界一古い銀行ということだそうです。ここで言うMonteが何かというと、これは質屋のことです。正確にいうとMonte di pieta` とかMonte dei pegni と言い「抵当銀行」の様に訳されます。要は、抵当を取って金を貸す商売で、所謂質屋にあたります。対象が貧しい人としたのも、日本の質屋と同じですね。Paschi di Sienaとは、シエーナの牧草地という意味で、もともと牧草地を所有していた人がこの質屋を始めたようですね。andare a monteという熟語があり、意味は台無しになる、破棄されるです。Dopo tre anni il loro matrimonio e` andato a monte.(3年後彼らの結婚は破局を迎えた)のように使うが、これも結局、質屋へ行くというのは経済的な破局を意味することから来たのでしょうかね。

 

ああそうなんだイタリア語3

3.Coccolare コッコラーレ

この言葉はご存じだろうか。これも面白い響きだと思います。意味は「可愛がる」という動詞ですね。Coccolo/coccola と言えば、可愛い子供の意味(男の子/女の子)になる。もっと可愛さを増すなら、coccolino(a)(コッコリーナ)となる。これを見ると思い出すのが、Cicciolina(チョチョリーナと読むが)というポルノ女優でありながら国家議員になった女性のこと。Cicciaは肉のことで、おでぶちゃんという意味で、ciccione(cicciona)(チッチョーネ、チッチョーナ)というが、これを使うと間違いなく嫌われるので、使わない方が良いでしょう。Cicciolinaも「肉」いう発想から出てきたものかと思うが、実はこのCicciolinaという女性はもともとイタリア人ではなく、イタリア人と結婚した後国籍を取って、国会議員になったらしい。そういうことで、こういう女優が国会議員になったことをイタリアらしいと特に気にしない人もいる。イタリアでも、単に名前が売れているだけという理由で国会議員になる人がいるのは、同じらしい。

ああそうなんだイタリア語2

2.CAFFÈcaffèはイタリア語で「カッフェ」と呼びます。フランス語では「キャッフェ」(スペルはcafè)のような音になりますから、少し違います。また喫茶店などをキャフェ(またはカフェー)というのもフランス語で、イタリア語ではBAR(バール)と言います。caffeteria(カフェテリア)というのはイタリア語で、これはBARに近いですが、一般にはホテルなどにある朝食用の部屋のことです。

イタリアでcaffèというとそれはespressoのことで、他にも色々なコーヒーがあるので紹介しておきましょう。caffè lungo(ルンゴ)は薄めのコーヒー、caffè doppio(ドッピオ)はダブル、caffè stretto(ストレット) またはristretto(リストレット)は濃い目のコーヒー、caffè decaffeinato(デカッフェイナート)はカフェイン抜きのコーヒーですが、これはcaffè hagu(アグ)とも言います。caffè corretto(コレット)はリキュール入りのコーヒー、caffè macchiato(マッキアート)は、エスプレッソに少量のミルクを垂らしたコーヒー。なおmacchiatoとは、「汚した」という意味。caffè をミルク(latte)で汚したとの意味です。latte macchiatoと言えば、逆にミルクに少量のcaffè を垂らしたものを言います。caffè amaro(アマーロ)またはcaffè liscio(リッショ)またはcaffè nero(ネーロ)は砂糖をいれない苦いコーヒー、caffè freddo(フレッド)アイスコーヒーなどがあります。caffè alla turca(アッラツルカ)はトルココーヒーで、これはイタリアにはふつうありませんが、ギリシアではよく飲みます。コーヒー豆がコーヒーの中に入ったままで、とても濃いコーヒーで、一緒に水がないと飲めません。

ああそうなんだイタリア語1

「ああそうなんだイタリア語」(読んで楽しいイタリア語の話、番外編)

 

「読んで楽しいイタリア語の話」は、イタリア語の単語230語ほどに関わる歴史、エピソード、個人的なエピソードなどを読み物としたものです。アマゾンでは、紙の本で2160円(196ページ)、電子本(kindle)は840円で販売中です。ここではその番外編として、エピソードの追加や裏話、他の単語などもあげて、一度読んだら忘れない単語をご紹介したいと思います。

 

1.TRUCCO:これは本の冒頭に上げたものです。この本の発想がこの単語から始まりましたので、ここでもこの単語から始めます。イタリア語の発音は「ツルッコ」ですが、英語ではtrickがこれにあたります。そして、このtruccoの意味が、「お化粧」だということで、笑って頂ければと思って最初に上げました。英語のtrickは日本語のトリックと大体同じ意味で、お化粧という意味はないようです。またラテン語系統のフランス語で「お化粧する、お化粧」は、maquiller, maquillage、同じくスペイン語ではmaquillar, maquillajeとフランス語と同じ系統の単語を使うようで、イタリア語とは違うようです。そういえば、スペインにTRUCCOというファッションブランドがあります。1995年頃にファッションの仕事をしていて、Madridにある同社を訪ねたことがあるのを思い出しました。非常に感性の高い商品だったことを覚えています。ファッションに詳しい方ならご存知かも。でもスペイン語でtrickはtrucoとcが一つですしそれはトリックの意味しかありません。だから、このTRUCCOは何を意味するのか不明で、「ブランド」だと思うしかないようです。いずれにしろ、お化粧はトリックであると、ずばり言っているのはイタリア語だけのようで、この言葉だけでもイタリア語って奥深いと思いませんか?

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