中国語あれこれ

中国語あれこれ 5

【中国語あれこれ 5】

中国の四大○○

日本では、日本三景、日本三大名園など、日本を代表する名所旧跡から料理珍味に至るまで、それを表す数字は「三」であることが多い。「二」という数字は、二つに割れるということで好まれず、結婚などの慶事の祝い金なども2万円というのはいただけないようである。

それに引き換え、中国では「好事成双」という四字熟語もあるくらいで、2の倍数は縁起がいいのである。酒の席では、1杯飲んだら間をあけずに2杯目の「干杯」と相成る。筆者のような下戸にとっては、甚だ頭の痛い習慣である。

さて、表題の四大○○であるが、四大姓が「張・王・李・趙」、四大料理が「魯(山東)・川(四川)・蘇(蘇州・上海)・粤(広東)」、四大名園は「拙政園(江蘇蘇州)・頤和園(北京)・避暑山荘(河北承徳)・留園(江蘇蘇州)」となっている。

また、四大発明は、歴史上も有名な「製紙・羅針盤・火薬・活字」、四大名著は、「三国志演義・水滸伝・西遊記・紅楼夢」。アートの分野では、刺繍部門で、「蘇繍(江蘇)・湘繍(湖南)・粤繍(広東)・蜀繍(四川)」を四大名繍と呼び、

書道では硯の名品として、「端渓(広東)・歙(きゅう)州(安徽黄山)・洮河緑石硯(甘粛南部)・澄泥硯(河南洛陽)」が四大名硯と言われている。

 

最後に、中国の美人はと言うと日本人なら恐らく誰でも「楊貴妃」を思い浮かべるであろうが、これもちゃんと四大美人がいて、他の三名は、「西施・貂蝉(ちょうせん)・王昭君」の名が挙げられている。

 

以上名前の羅列ばかりになってしまったが、中国人との会話の際には、話題にしてみては如何だろうか。

 

〔第五回 完〕

〈黒澤義己〉

中国語あれこれ 4

【中国語あれこれ 4】

中国のことわざ

             

日本のことわざ・格言には、中国由来のものが多々あることは、周知のことと思う。「五十歩百歩」、「蛇足」、「百聞は一見に如かず」などが代表例である。

それぞれ中国語では、「五十步笑百步」、「画蛇添足」、「百闻不如一见」となる。

どれも日本語より長いが、はっきりと意味を伝えている。但し、「百闻不如一见」は更に「百见不如一干」と続き、より示唆に富んだものになっている。

 

「馬の耳に念仏」、「猫に小判」など動物の入ったことわざもある。どちらも「对牛弹琴」だが、「投珠于诸」というのもあり、これはまさに「豚に真珠」にぴったりである。

「弘法も筆の誤り」といった人名の入ったことわざもある。「三个臭皮匠赛过诸葛亮」(三人寄れば文殊の知恵)は、日本人にも分かりやすい。「说曹操曹操就到」も、少し考えれば察しが付くのではないだろうか。

尚、「弘法(に)も~」は、弘法大師が中国人ではないこともあり、固有名詞は出てこない。中国語では、「智者千虑,必有一失」或いは「聪明一世,糊涂一时」が近いことわざになる。

「臨機応変」などは、中国語そのもののように思えるが、実際に中国で使われているのは、「随机应变」或いは「见机行事」である。また、「馬子にも衣裳」

は、いかにも日本語らしいが、中国にも「人是衣裳,马是鞍」というよく似た表現がある。

「入乡随俗」(郷に入らば郷に従え)、「久居则安」(住めば都)は、字面から分かると思う。「眼中钉」もやはり意味は取れると思うが、日本語に比べてかなり痛そうである。

 

中国語学習がある程度進んだ段階で、たまにはことわざ等について考えてみるのも良い学習法かと思い、本稿を思い立った。うまくいけば、「一举两得」と言えるのではないか。

第四回 完

〈黒澤義己〉

中国語あれこれ 3

中国人のゲン担ぎ

2008年8月8日午後8時8分8秒・・・これは、北京オリンピック開会式の日時である。このように、中国では数字の“8”が好まれる。「八」は発音が似ていることから、发展/发财の「发」に通じ、大事なところには“8”が使われることが多い。例えば、社長室は8階に置く、車のナンバーは、“518”(⇒我要发)/“816”(⇒发一路)等々。

数字以外には、人に物を送る時にも、良し悪しがあるらしい。こちらは、方言が関わっていて、地域的な要素が大きい。例えば、広州等の広東語圏では、お祝いに時計を贈るのはタブーとされている。「時計を贈る」=“送钟”が、“送葬”と同音になるためである。また、上海語圏では、病人の見舞いにリンゴを贈るのは良くない。「リンゴ」=“苹果”が“病苦”に非常に近い音だからと言われている。ただ面白いことに、北京だと、“苹”と“平”(平安)が同音であるため、リンゴはむしろ喜ばれる。筆者もかつて上海赴任の際、ある中国料理店の北京出身のおかみさんに、“祝你平安!”の言葉とともにとリンゴをもらった経験がある。

再び数字に関わる話。中華人民共和国は、1949年建国であるが、それ以来、大きな事件・事変が起こるのは決まって“○○○9“年となっている。例として、1959年”西藏骚乱“、1979年”中越战争“、1989年”天安门事件“、2009年”乌鲁木齐骚乱“等が挙げられる。このことを中国では、“逢久必乱”と呼んでいる。偶然が重なっただけとは言い切れないものがあるようにも思える。

第三回 完

〈黒澤義己〉

中国語あれこれ 2

【中国語あれこれ 2】

中国語とは

現在の世界の人口は約70億、中国の人口は約14億、よく言われることだが、地球上の5人に1人が中国人ということになる。その中国で話されている言葉は、人口の9割以上を占める漢民族の言葉で、それを「汉语」と呼ぶ。

但し、中国語学習者の間では周知の如く、中国には夥しい数の方言が存在し、漢民族同士でも出身地が異なると、全く会話が成り立たないという現象が多々起こる。有名な例を挙げると、中華人民共和国の初代国家主席・毛沢東は湖南省の出身であるが、その言語は「湘方言」で、他地域の人たちにはほとんど通じなかったそうである。毛沢東自身もそのことは心得ていて、演説の際には、例えば「世界」と言っても、「湘方言」では通じないため、“World”と英語を使ったりして補っていた。

そこで、新中国では、全国共通の言葉の必要性を痛感し、首都北京の発音を標準音とし、北京を中心とする北方地域で用いられている言葉を標準語彙とする言葉を共通語と定め、それを「普通话」と名付けた。

上述の通り、現在の標準中国語は、「普通话」であるが、海外ではこの「普通话」という単語はあまり知られていないため、「中国语」・「中国话」・「中文」が“Chinese(language)”として使われている。また、台湾では「國语」、シンガポールでは「华语」が公用語となっているが、全て同じ言語である。

このように自国の言語を幾通りもの言い方で呼ぶのは、世界でも稀ではないかと思われ、甚だ興味深い。

     

  第二回 完

〈黒澤義己〉

中国語あれこれ 1

【中国語あれこれ】

中国のカタチ

                

 長年中国関連の仕事に携わってきた経験をもとに何か書いて欲しいとの要請を受け、柄にもなくエッセイのようなものを書くことになった。      

そこで振り返ってみると、筆者が仕事として中国語を使い始めて何と40年に

なることに気付いたのである。全く意識していなかったのだが、今が丁度その時であったのかと思う。

 この投稿の読者の多くは、中国語初級者であると思われるので、初回の本稿では、形から入りたい。

中国は、下の地図を見れば一目瞭然、ニワトリの形をしている。黒龍江省と内モンゴル自治区の最北部がトサカ、新疆ウイグル自治区が尻尾(尾巴)、華東地域が腹(肚子)と言う訳である。

     

 

  「杀鸡焉用牛刀」(鶏を殺すのに牛刀は不要)。次回より、筆者がこのニワトリに関して見聞きしたことなどを、逐次述べていきたい。

第一回 完

                            

  〈黒澤義己〉

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